時計仕掛けのの世界
歴史の上で最も重要な本と言えるニュートンの「プリンキピア・マテマティヵー自然哲学の数学的原理」によって、19世紀は科学が確固とした頼れるものであった。
ニュートンはこの本ので、古代ギリシャ人からベーコン、ダ・ヴィンチ、ガリレイ、ケプラー、デカルトに至る数多くの科学者や哲学者によって追求され、この時代に煮詰まってきた知識を見事に統一した。ニュートンは近代科学の父であると同時に「時計仕掛けの世界」という概念の唱道者でもある。
ニュートンの世界観は単純で、簡単に理解できる。地上でも天上でも、すべてのものに同じ法則が当てはまる。世界は機械とその部品のように動いており、「時計仕掛けの宇宙」と作ったーそういう考え方である。
この「時計仕掛けの世界」という概念が、アダム・スミスの「神の見えざる手」やマルサスの人口論、ダーウィンの自然選択による進化論、フロイトの「心と意識」、ホイップズをはじめマルクス、ジョン・スチュアート・ミル、コント、ウェーバーらの社会科学など、17世紀以降のさまざまな理論に反映されていることは容易に見て取れる。それぞれに細かい違いがあり、単純で静的な「時計仕掛けの世界」像に変更を加えているが、基本は機械論であり合理的であり、すべてが大きな機械のように動いており、すべてが単純な法則に遵い、すべてが調和しおり、すべてが理解でき、すべてが基本的要素にまで分化できるという考え方だ。すべてが機械的に動き、知識によって機械的な動きはコントロールできると考えらていたため、人々は世界を社会を自分自身をコントロールできると考え理想を追い求めることができた。
ニュートン以降の300年間で科学、技術、産業、富の爆発が起こり、物質面ではユートピアの実現がちかいと言えるほどの未曾有の進歩が達成された。「時計仕掛けの世界」に対する確信がなければ、ここまでの進歩は不可能だっただろう。
アインシュタインの相対性理論で絶対がなくなった
20世紀初めに、アインシュタインが相対性理論が生まれた。これによって、時間も空間も絶対的なものでなく、すべてものが相対的であることがわかった。そして科学者ゲーテルが1931年に数学において絶対的な真実はあり得ないと証明してしまった。
非線系科学の発達
20世紀後半以降は、カオスと複雑系の理論によって科学はいっそう進歩した。世界のほとんどもの、特に気象、脳、都市、経済、歴史、人間といった重要なものは非線形のシステム(系)であり、ニュートン以降19世紀末までの科学者が想定していたほど単純でも明快でもないことがわかった。つまり、コンロール不可能で、予想するのは危険である。単純な系が驚くほど複雑に振る舞う。そして、複雑な系が極めて単純に振る舞う。この奇妙で不安定な世界では、知識や常識や正しい意図からよい結果が生まれるとは限らない。意図せざる悪い結果が生まれてくることも多い。
ビジネスに応用できる「新たな原理」
しかし一見、混乱した振る舞いの中に不思議なほど一貫した法則やパターンがあることに、科学者たちは気づき始めた。ある程度の工夫は必要だが、無秩序と混乱の中に美しい法則性を見つけ出すことができるのである。
①ビジネスの価値を決める基本的要素は、経済情報である。経済情報の市場は極めて不完全であり、うまくすればとてつもない価値を獲得することもできる。
②成長の原動力となるなは技術である。
③技術の進歩を促す原動力となるのは、技術者ではなく起業家だ。
④生存競争がビジネスの核心であるのは確かだが、この競争は主にアイデア同士が行うものであって企業同士が行うものではない。企業間の競争は経済にとってそれほど重要ではなく、個人の成功にとっても決定的ではない。さらに言えば、ビジネスを戦争に例えるのは間違えだ。